椎名誠さんの自伝的エッセイの読む順番②
やぼを承知で勝手に椎名誠さんの「自伝的バカ話」を読む順番を紹介するということで、
まずは1冊目。
『哀愁の町に霧が降るのだ』
椎名さんの高校時代から就職をするまでを振り返ったエッセイで、現在(執筆当時)とクロスオーバーする内容。
椎名さんの「自伝的バカ話」には、イラストレーターの沢野ひとしさん、弁護士の木村晋介さん、そして書評家の目黒考二さんが登場するが、このうち、沢野さんと木村さんは椎名さんは高校時代からの仲間であり、同作からその関係性が描かれている。
3人は「克美荘」という日の当たらない東京・小岩のアパートで共同生活を送っていたが、本書では、そこでのエピソードがユーモアたっぷりに語られている。
青春というのは、オトナになって振り返れば、あきれるくらいバカらしいことの連続。
椎名さん以外にも、東野圭吾さんの「あの頃ぼくらはアホでした」(集英社文庫)、原田宗典さんの「十七歳だった!」(集英社文庫)など、自身の青春時代を面白おかしくエッセイで描いた作家は多いが、そんな中での古典的な名作の1つと言っていいだろう。
実際、東野さんも、原田さんも、この手のエッセイには椎名さんの影響を受けていたのではないか…とも、私は勝手に想像している。
はじめて本書を読んだのは私が高校生の時。
当時はここでのおバカな話に笑い転げていたのだが、それから四半世紀。この「自伝的バカ話」の印象は変わった。
青春おバカ話はあくまで「フリ」なのではないかと思うようになった。
後半では、共同生活を送った「克美荘」から、木村さんが離れ、沢野さんが離れ、やがて椎名さんも離れることになる。
そして椎名さんは就職し、社会に飛び出す。
モラトリアム期間は過ぎ去って、それぞれが大人の階段をのぼっていくその過程が描かれている。そここそが本書の魅力であり、面白さなのではないか。
若さとは何事にも代えがたい特権。ただ、若いだけでは知ることができない面白さを本書は秘めている。
若い時に読んだという方も、ぜひ大人になってもう一度、読んでほしい。
――パート③へ続く。