椎名誠さんの自伝的エッセイの読む順番④【最後】
【1】『哀愁の町に霧が降るのだ』
【2】『新橋烏森口青春篇』
【3】『銀座のカラス』
【4】『本の雑誌血風録』
【5】『新宿どかどか団』
【6】『新宿遊牧民』
以上の6作品の椎名さんの「自伝的エッセイ」を紹介してきた。6冊分で人生を振り返るとなると、それはもはや“大河”とも言えるだろう。
読み続けていけば、椎名ワールドにどっぷりつかることは間違いない。
そうなると、新たな新作を期待してしまうが…実は、この“大河”には副読本がある。
『別人「群ようこ」のできるまで』シリーズの最後に副読本を紹介したい。
●『怪しい探検隊シリーズ』
椎名さんの自伝的シリーズに匹敵する人気作品群。
自伝的エッセイが仕事などのメインの話であるならば、このシリーズはプライベートの「遊び」のことが描かれている。
椎名さんのライフワークである仲間との“旅”の話した。
特に私が好きなのはシリーズ2作目の「あやしい探検隊 北へ」。
同書の最後に「探検隊」が複数の車で「北」へ向かっていく中、無線機で連絡を取り合うのだが、その描写が本当に最高。
「笑わずにはいられない本」というのは、椎名さんの本以外にも多く読んできたが、そんな中でも最高の描写だ。
●『本の雑誌風雲』
椎名さんの盟友・目黒考二さんの著作。
あらためて説明すると、椎名さんと目黒さんは書評誌「本の雑誌」を1976年に創刊させ、そこで椎名さんは注目を集めたことで、デビューする。
当初は椎名さんと目黒さんが共同で運営していくのだが、作家として椎名さんが多忙になると、目黒さんが中心となって「本の雑誌」を育てていくことになる。
「本の雑誌」はアルバイトを頼む予算がなかったため、学生を「助っ人」として募集し、仕事を手伝ってもらっていた。その「助っ人」たちと目黒さんの交流が書かれているのが本書だ。
本書には目黒さんから見た椎名さんが所々に描かれており、興味深い。
●『別人「群ようこ」のできるまで』
「本の雑誌社」の社員第1号はエッセイストの群ようこさん。もともと「本の雑誌」のファンであったことから、社員となった群さんだが、徐々にイライラとすることがつのっていく過程が群さん流のユーモアで描かれている。
イライラが高まっていったことは間違いないのだが、最後まで群さんは椎名さんや目黒さんへの敬意は失っていないのは、本書を読めば伝わってくる。
ただ、女性目線で椎名さんや目黒さんへ批判的な視点も持っており、そこは群さんだからこそ書けることであり、とても興味深い。
<最後に>
あらためて、本は出会いであり、順番を解説するなんて野暮を承知で書いてしまった。
ただ、この椎名さんワールドに足を突っ込めば、どんどん関連作品を読みたくなり、底なしの沼にハマりこむことは間違いない。
椎名さんワールドのファンとして、ファンをもっともっと増やしたくて書かせていただいた。